大判例

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東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)60号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二、原告は、本件審決が、原告の提出した昭和四一年七月七日付手続補正書に添付した訂正明細書記載の訂正案の内容は、特許請求の範囲を実質上拡張または変更するものであるとして、旧特許法七五条五項の規定による訂正命令を発する必要がないと認定したことは、裁量権の行使を誤り、ひいて本願発明の特許性の判断を誤つたものである旨主張するが、右主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、当事者間に争いのない本願発明につき出願公告された明細書の特許請求の範囲の記載と原告主張の手続補正書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の記載とを対比検討すると、前者は、特定の原料物質に特定の反応手段を加えて特定の非水溶性モノアゾ染料を製造する方法であるのに対し、後者は、これと同一の特定の非水溶性モノアゾ染料を使用する特定の繊維及びその製品の染色方法であつて、特定染料の製造方法とこれを用いての染色方法とは、産業上異る技術分野に属するものであることは明らかであるのみならず、後者において使用する染料は、前者における特定の製造方法によつて製造される染料に限られることなく、同一要件を充たす限り、その他の製造方法によつて得られるべきものをも含む余地のあることが明らかであるから、前者を後者に訂正することは、特許請求の範囲を実質上拡張または変更する場合にあたるものというべく、かような場合に、旧特許法七五条五項の規定に基づく訂正命令を発することが許されないことは、同法五三条、五四条及び七三条三項の規定に徴し、まことに明らかなところといわなければならない。前記訂正明細書の特許請求の範囲において、染色の目的物を特定の繊維及びその製品に限定したことは、右の結論に何らの影響を及ぼすべきものではない。したがつて、原告が前記訂正明細書を提出して、これに記載の特許請求の範囲のものに訂正すべく、旧特許法七五条五項の規定による訂正命令を発することを求めたのに対し、本件審決が、その必要なしと認めたことは正当であつて、その間に裁量権の行使を誤つた違法はないというべきである。(むすび)

三、以上のとおりであるから、裁量権の行使を誤つたことを前提として、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、その余の判断に立入るまでもなく、理由がないことが明らかである。

よつて、原告の請求を棄却する。(服部高顕 石沢健 滝川叡一)

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